修平の視察報告
つくば国際戦略総合特区、つくばモビティロボット実験特区を視察
平成26年8月20日(水)~21日(木)
-総務常任委員会視察-
●つくば国際戦略総合特区
つくば市は筑波研究学園都市建設の決定から50年が経過し、現在では産業技術総合研究所など32の研究機関が集積し、2万人を超える研究者がいます。
また、わが国の原子力研究の中心地でもあり、世界最高性能の研究施設「J-PARC」が立地し、がんなどの難病の治療薬や、次世代電池などの開発が進められています。
つくば国際戦略統合特区では、今後、成長が期待されているライフイノベーション(健康・医療)と、グリーンイノベーション(環境・エネルギー)の分野において、産・官・学の連携により、新たな産業の創出につなげていくことが期待されています。
●次世代がん治療「BNCT」
国民の最も多い死因はがんで、その死亡率は年々増加傾向にあり、放射線治療の患者数も増え続けており、来年には、36万人に達すると予測されています。しかしながら、外科療法や化学療法と比べ、放射線治療の割合は、米国、ドイツ、英国などが50%を超えているのに対し、日本では25%と低く、いわゆる「原爆コンプレックス」が原因とも言われています。
放射線治療では、これまで陽子線や重粒子線治療などが行われてきましたが、「いばらき中性子医療研究センター」で研究が進められている「BNCT(ホウ素中性子捕捉療法)」では、ピンポイントでがん細胞のみを破壊することができます。そして、通常6週間の照射が1回(約30分)の照射で完了するなど、患者への負担が極めて少ないというアドバンテージがあります。
また、原子炉を使わない加速器を使用した治療装置であるため、原子炉規正法の規制を受けず、煩雑な管理の必要がありません。
治療施設の設置に係るコストは陽子線が約70億円、重粒子線が約150億円に対し、「BNCT」は約30億円以下と非常に低く、治療費についても、陽子線や重粒子線が250~300万円であるのに対し、「BNCT」は150万円に目標設定されており、費用対効果も高く、年間を通じて多くの患者に治療を提供することができます。
今後は、「BNCT」の先進医療化と治療装置の薬事登録、「BNCT」の効果を発揮させるための薬剤の開発などが当面の課題でもあります。
現在、大阪府は5大がんによる死亡率が全国と比べて高い状況が続いています。また、がん検診受信率も全国最低水準で推移していることから、こうした状況を打開するために、全国に先駆けて、がん対策推進条例を制定し、医療機関の体制整備の充実などを図っているところです。
今後は、「BNCT」の開発実用化とともに、次世代がん治療の受け入れ態勢についても検討を行うことが必要です。
●つくばモビリティロボット実験特区
「セグウェイ」などのパーソナルモビリティ(搭乗型移動支援ロボット)の公道(歩道含む)での実験を行うことができる特区で、日本はもとより、アジアで初めて認定を受けました。
これまでセグウェイジャパンやトヨタ自動車、日立製作所などが通勤や防犯パトロールなど12,000km以上の走行実験を行っています。
実験には実施場所や搭乗者の要件等が限定され、所轄の警察署長の道路使用許可が必要となります。また、保安要員(異常発生時の連絡員)を近傍に配置義務が課せられているなど、今後、さらなる規制緩和や法改正が必要です。
現在、「セグウェイ」を個人向けには販売することができず、1台あたりの金額も約80万円と高額であることから、規制緩和とともに、実用化に向けた取り組みが求められています。
また、10%勾配までの坂道でも利用することが可能ですが、今後、4輪車の開発などが進めば、河内長野市などの坂道が多い住宅地においては、いわゆる「買い物困難者」対策として、極めて有効な移動手段であると言えます。
ちなみに現存する電動車椅子は道路交通法上、「歩行者」という位置付けとなり、公道での走行が認められていますが、今後、パーソナルモビリティが歩道を走行できる新しい移動機器として、自動車や原付とは違う「新たなカテゴリー」に位置付けられることが、最大の課題でもあります。
●サイバーダイン社
映画「ターミネーター」でアンドロイドを製造する企業「サイバーダイン社」。それと全く同じ社名で世界的にも話題になったつくば市の「サイバーダイン社」を訪問しました。
同社では装着する人の「意思」を感知して、立ち座りや歩行動作をアシストする自立動作支援ロボット「HAL」を製造しています。動作原理は脳から発せられた微弱信号を皮膚表面から感知するというもので、特許申請が行われています。
「HAL」には福祉用と医療用があり、福祉用はすでに170ヶ所の介護施設において、470体が利用されています。1台あたりのレンタル料は年間15万円前後です。
また、福祉用には患者用だけでなく、介護従事者が腰を補強するための機器もあり、今後は、介護施設内の労働環境の向上にも寄与することが予測されます。
一方、医療用については、現在臨床実験を重ねており、医療機器登録をめざしています。
しかしながら、ドイツでは先行して利用されており、年間420万円までの医療保険が適用可能です。実際に、脊髄損傷された患者が車椅子生活から歩行できるようになるなど、「HAL」の利用により生活が劇的に変化している事例もあるとのことです。