修平の視察報告
東京都豊島区の庁舎整備と再開発事業を行政視察
令和6年1月18日(木)
-個人視察-
●豊島区の新庁舎整備方針が示されるまでの経緯
平成8年、当時の市長が財政危機を理由に、計画していた区役所庁舎の現地建て替え計画の延期を決定しました。当時の借入残高は872億円まで膨れ上がり、財政再建団体への転落の危機にあり、新庁舎の建設基金も平成5年度末には約190億円あったものが、平成11年には底をつきました。
この間にも庁舎の老朽化が進み、本庁舎は築後49年、分庁舎は築後55年が経過し、庁舎の狭隘化による窓口の混雑や区役所機能が7ヶ所に分散していることもあり、来庁者の不便さは際立っていました。
こうした中でも、バリアフリー化への対応や駐車場不足の解消、防災拠点機能に対する不安解消など、多様な行政ニーズに対応できる新庁舎建設が必要となりました。
そこで、区所有の旧小学校跡地と児童館などを権利返還し、旧庁舎の定期借地権を設定するとともに、市街地再開発の事業手法を採用することで新たな財源を生み出し、平成18年に「新庁舎整備方針(素案)」が公表されました。
●旧庁舎地区の資産活用による「庁舎床」取得の流れ
新庁舎整備を進めるにあたり、区所有の旧小学校と児童館の土地・建物85億円分を権利返還するとともに、旧庁舎地区に76年の定期借地権を設定し、191億円を地代(開発事業者の一括前払いが公募条件)に充当しました。これにより、新庁舎に必要な約2万5千㎡の「権利床」と「保留床」を取得しました。
なお、こうした資産活用により、3階から9階までを区役所(区議会ゾーン含む)として「区分所有」し、区が権利者の“一人”となりました。
なお、再開発準備組合は平成17年に設立され、21年に本組合に移行し、27年に竣工・開設されました。
●民間活力によるマンションを併設した新庁舎
建物は地下2階から地上2階までは共有部で、1階と2階は管理組合でテナントを管理し、3階から9階を区役所(区議会含む)が所有しています。
そして、10階には緑化スペース「豊島の森」が設置され、憩いの場として活用されています。
また、11階から49階までは分譲マンションとして併設され、名称「ブリリアンタワー池袋」は地域のランドマーク的存在にもなっています。
なお、地下2階で東京メトロと直結し、雨に濡れずに移動可能な超都市型構造となっており、マンション価格は分譲時より大幅に高騰しています。
●旧庁舎地の活用
新庁舎整備と併せて、旧庁舎地の活用も進められました。にぎわい拠点や文化拠点の創出などが公募条件とされ、8つの劇場や新ホール、映画館、ボカロ劇場などが進出し、フジサンケイグループなどが入居する超高層オフィスタワーが建設されました。
これにより、年間650万人の集客と270億円の経済波及効果(試算)を生み出し、新庁舎と旧庁舎を併せて開発したことでシンクロ効果を発揮しています。
●大阪府と河内長野市における活用方策
財政難から始まった豊島区の新庁舎整備計画であしたが、公的資産の活用と最適化を図ることにより、新たな財源と価値を生み出した成功例とも言えます。
この手法は大阪府のみならず、府内市町村の今後の再整備においても、選択肢の一つとすべき事例と言えます。